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右翼と左翼

written by 齊藤 貴義 on

なぜ右翼には低学歴と低所得が多いのか

推論上の飛躍(inferential leap)が多い文章のように思います。まず議論の前提として、右翼・左翼の定義が明確化されておらず、「好戦的であることは、移民に対して排他的であることと並んで、右翼の大きな特徴であり、左翼との大きな違いであると一般に認知されている」などの筆者の印象論から右翼像と左翼像の傍証を試みているにすぎません。

この文章が出しているデータは、外国人労働者に対して排他的な意思を持つことに本人学歴や本人年収と関連性がありそうというデータだけであり、そこから低学歴で低年収な人々が戦争を望んでいる右翼的傾向を持つと推論するには、あまりに多くの飛躍があります。外国人に対して排他的な意見を持つことは、筆者が指摘しているように学歴や年収が低い層が直面する確率が高い単純労働の世界では外国人労働力が彼らの代替可能な労働力として国際競争に立たされているという経済状況による意思の形成であって、右翼思想や戦争に関する意思の形成ではないのです。

またプロレタリア右翼として赤木智弘氏の”「丸山眞男」をひっぱたきたい―31歳フリーター。希望は、戦争。”が引用されていますが、そもそも赤木氏の戦争や日本社会に対する考え方が広く低学歴・低年収の層の考え方と相関しているのか、という重要な論証が一切なく議論が進んでいきます。一度この辺は社会調査で重回帰分析を掛けてみなければ、推論に推論を重ねるという状況に陥るだけではないでしょうか。

つまり本論には日本社会に適用できるという蓋然性が乏しいのです。蓋然性が乏しいまま描かれた右翼像や左翼像は虚像でしかありません。理論には実証が伴わなければなりません。実証データが整っていない中で右翼という心性の問題を浮かび上がらせるのは難しいのです。

(教育社会学などの分野では文化資本の問題をSSM調査・関西調査・関東調査などの社会調査を重回帰分析することで、文化資本と親の学歴などの相関係数を統計的に分析しようとしています。右翼と左翼という心性の問題に関してもこのような社会調査と実証研究の拡充を願っています)

タグ: 実証


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